学生街の喫茶店

高校生になると直ぐに毎日の喫茶店通いが始まった。
今とは違いチェーン店などは殆ど無く各店が個性を持っていた時代で特に学生街には面白いところが多かった。
純喫茶なんて呼ばれている所もあり、当時は全席喫煙席で珈琲を嗜み煙草を吸うために入るのが文字通り
喫茶店と云うことだったので大分閉鎖的な処だったかも知れない。しかしそんなところが僕にとっては
ワンダーランドで、モノラルで音の悪い有線からの音楽を聴きながらあれこれ夢をふくらませていた。
煙を燻らして見た夢の中には喫茶店のマスターになりたいなんてものがあったのを今思い出した。 

The Association's Greatest Hits  THE ASSOCIATION (1969)
60年代後半に大活躍したソフトロックの大御所、今回は3種類の大御所特集で行こう。 最初はこのアソシエーション、"Windy""Cherish""Never My Love"とNo.1ヒット曲を 連発し多くのミュージシャンにもカバーされた。何とも言えない郷愁を呼ぶノスタル ジックなサウンドは、60年代を知ってる人にはその時の情景が浮かび上がって来ること だろう。しかし彼等の美しいハーモニーはリアルタイムの人のみならず現代の若者にも 支持されていると云うのがまた嬉しいことだ。

60年代後半から70年代前半はロック喫茶の全盛期だった。
レコードも少年達にはまだ高く、中古レコード屋でぐらいでしか手に入れられなかった時代の話しだ。
よく学校をサボり渋谷、新宿や銀座、時には吉祥寺まで足を延ばしロック喫茶のみならずジャズ喫茶、
フォーク喫茶などを徘徊した。どの店でもラックには膨大な数のレコード盤が入れられ、JBL4343などの
巨大スピーカーが正面に置かれていたもので、時折リクエストタイムなどもあり好きな曲を掛けてもらえた。
しかしその頃から家庭のオーディオも質が上がり音の嗜好も多彩になってくる、それもあってかその手の店の
凋落が始まり徐々に街から姿を消していった頃でもあった。
 
Led Zeppelin II    LED ZEPPELIN (1969) 
ロック喫茶の大御所というか定番、大爆音で聞くのが礼儀と云うものか...
バンド名の由来は発光ダイオードで出来たツェッペリン型飛行船という感じだったと
思うが名の通りに衝撃的なサウンドは世界中に飛来し当時の若者達を震え上がらせた。
そのツェッペリンの数あるアルバムの中でもこのセカンドで彼等は全世界に認知され、
中でも"Whole Lotta Love"邦題"胸いっぱいの愛を"は彼等の代表曲でもあり、これぞ
ハードロックと言わしめる。戦争、ヒッピー、ドラッグなどの時代背景が複雑に絡み合い
もう2度とこんな音には出会うことは無いだろう。

80年に突入すると"贅沢は素敵だ"なんて云うコピーを引き下げて雑誌ブルータスが創刊され、TowerRecordが
アメリカから進出、それまで御法度とされていたレコードの縦済みのディスプレイが新鮮だった。折からの
サーフィンや西海岸ブームに乗って新型のブランド信仰が生み出され、小説の中よりクリスタル族なるものが登場
そんな背景の中、街には当然の如くアダルトコンテンポラリーな音が溢れ出す。そして渋谷、六本木ライン上には
フュージョンやAOR系のレコードをターンテーブルに掛けるカフェバーなる店が増えだした。レコードは輸入盤屋で
買う時代になり、昔の純喫茶時代とは異なりBOSEのスピーカーなどで装飾された音は格段と良くなった。
しかし薄っぺらに化粧されたその世界では夢も薄くなっていくような気がしたのは僕だけだっただろうか。

Rhapsody & Blues   THE CRUSADERS (1980)
初期の頃はジャズクルセイダースと名乗っていたらしいがJAZZ/ROCKバンドに転向。
FUNK色が強かったがこの頃から都会的なメローなサウンドになりフュージョン界を
リードしていく。基本はピアノ、サックス、ドラムの3人組でそこに素晴らしいゲスト
ミュージシャンが加わる。このアルバムではボーカルにビル・ウィザースを起用して
"SOUL SHADOWS"を大ヒットさせた。80年はグローヴァー・ワシントンJr.のアルバム
WINELIGHTと共に青山界隈を根城にしていたクリスタル族の御用達アイテムだった。

現在は喫茶店のマクドナル化が進み何処にいっても同じ雰囲気、同じ味が楽しめる。
一時はかなり高くなったコーヒーの値段も今は30年前の高校生の頃と変わらないような額だ。
しかしそんな店も居心地は快適なのだが面白味は少なく、若者の夢がふくらむ空間では無いような気がする、
きっと店としてのコーヒーショップの本来の形になったのだろうが少し残念だ。
巷では再びのカフェブームらしいが無機質なデジタル音が流れそこには生活感は無く実際とのギャップが甚だしい。
まあ嘆いても仕方がない、後はタイムマシーンにお願いするだけだ。